神戸に帰ってきてから
一度も会わないままだった。
松原くん、お疲れさまでした。
あたしがライブハウスでちゃんとしたワンマンライブを、初めて開催したのは、
2002年、当時「パインフィールズ」という名前の、松原くんのお店だったのだ。
「月さえも眠る夜」というタイトルのライブ。
そこで来場者にお土産の2曲入りMD「ためいき/氷雨」を無料配布したんだった。
今までそんなことずっと忘れていたのに、
あの日、ライブが終わって最後に精算したとき、
他愛もない内容の会話をしたときの、
その松原くんが、急に思い出されて、
斜めにちょっと顔を傾けて、あたしのほうを見たときの、
髪の毛が顔にかかった、あの感じを、
今さら思い出すのだ。
今までそんなことずっと忘れていたのに。
あの日無料配布したデモテープの2曲は、メジャーからCDを出せたよ。
1曲はデビューシングルになったよ。
もう1曲はメジャー最後のシングルのカップリング曲で。
くしくも、メジャーの最初と最後になった。
ねぇ、松原くん。
いまあたしが音楽の神さまをそばに感じて、その存在を信じていることを話したら、
貴方はどんな顔で応えてくれただろうか。
ねぇ、松原くん、
また4月がきたら、
あたしはカート・コバーンじゃなくて、
松原くんを思い出すことにするね。